諸星先生は似たような物語のモチーフや怪物を度々繰り返し使って全く別の作品に仕上げることがあります。
そんな事例を紹介します。
それは、『妖怪ハンター』の1978年のコミックの挿画に現れました。
なんでしょうね。
幽鬼のような得体のしれない、そしておそらくとてつもなく巨大な怪物が、海か野原に影を落とし、何かを見下ろして凝視している。気味が悪くなりました。
『不熟』P111によると、タイトルは『屈む怪物』だそうで、貝塚茂樹の『中国神話の起源』の中の一文からイメージした、との説明書きがありました。
次に現れたのは1985年の月刊少年チャンピオン増刊号の『I’mチャンピオン』掲載の『影の街』でした。
怪獣です。顔は影になって見えません。
完全に恐怖そのものです。
怪獣として人々に襲いかかります。
続いて2015年の特選集第四集では。
男女に襲いかかろうとしています。
そして2018年。
先日発売の『ビッグコミック増刊号』に掲載された、『オリオンラジオ・赤い橋』です。
おそらく、賽の河原の鬼。
子供が親の供養のために積み上げた小石の山を鬼が崩してしまうという。
関連して、「巨大な何かが歩いていく」というモチーフについては、ヴィジュアルは異なりますが『カオカオ様』にも通じています。
このように類似したモノが時期や媒体を変えて現れるものですから、諸星作品の読後には奇妙なデジャヴ感のようなモヤモヤを感じずにはいられません。これも、諸星先生の作風の一つと言えましょう。
オマケです。
先程の『オリオンラジオ・赤い橋』に話を戻します。
賽の河原のお話では、地蔵菩薩が子供を救うことになっていますが、本作では「エノケン」と思しき人物が現れ、子供たちに接触してきます。
つまり、「エノケン」=「地蔵菩薩」という図式だと解釈しました。
あ~なるほど〜。
最後に女の子と一緒に行動するし。
これって救済だよね〜と、
独りで勝手に納得しました。(^o^)
が、ちょっと待って…
それでは三島由紀夫は…何なのか?!
この場所って…むしろ、天国にも地獄にも行けない魂がさすらうという「煉獄」の方かもしれませんね…。